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New York and Jazz |
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煙が目に染みる
謎子は通りに面したカウンターに座り、ぼんやりと窓の外を眺めていた。 シカゴ特有の強風に負けじと人々はコートのエリを立て少し前かがみに 午後から降り出した雨は、風と混じりながら夜の街を一層冷え込ませた。 謎子は冷え切った心を暖めるかのようにグラスを傾けマティーニを流し込んだ。 ちょうどその時 「もしかして・・・」 背後から日本語が聞こえた。 謎子がゆっくり振り向くと、そこには40歳前後の見知らぬ男が立っていた。 気障な男、と謎子は思った。 「なぜ?私とわかったの?」 「実は、どこかで謎子を見かけたら声をかけてくれと、 「支配人って。。。あの?」 「ええ、あの支配人ですよ。」 二人は初対面にも係わらず、お互い顔を見合わせて頷いた。 謎子は煙草を取り出した。 『なんだ。。。100円ライターか・・・ 謎子は男の無神経なアンバランスがいまいましく 男は当然の如く謎子の隣に座り、バーボンを注文した。 店内は、一杯やるにはまだ早く、かといって 「どうしてまたシカゴへ?」 「街頭音楽家の音楽をふと聞きたくなったの、あなた聞いた? 「ああ、ストリートミュージシャンのフルートですね、ええ聞きました」 この男はどうも横文字が好きらしい、と謎子は思った。 「で、どう思った?」 「ワンダフル!」 「それだけ?」 謎子は遠くを見る眼差しで軽く煙を吐き出した。 「謎子さんって 「アンニュイ? 「同じだと思うけど・・」 「謎子さんお仕事はやはり音楽関係なのですか 謎子はグラスの縁を指でなぞりながら言った。 この男とも長く話しすぎた、そろそろ終わりにしなくては、と謎子は思った。 おもむろに立ち上がった謎子に男は驚き 謎子は振り返らず片手を少し振り 「行き先は。。。風に聞いて・・・」 と立ち去った。 謎子の開けたドアから勢いよく冷たい風が吹き込み 後には謎子の吸いかけの煙草と、未払いの伝票が残されていた。 持ち主のなくなった煙草から上る煙が男の目に染みた。 シカゴ編 完
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